グーグルを毎日思いやりがある組織にした男:チャディー・メン・タン マインドフルネス瞑想とEQ開発を合体させた研修プログラムの実践例を探る

はじめに

ポジティブ心理学とは「よい人生」について科学的に探究し、その実現に向けて心理学的介入を試みていく学問である [1]。

目指すところとして、従業員個人および組織の生産性を上げると同時に、仕事への満足度を高め、生産的であることと満足感を味わうことが排他的な関係とはならないようにしていることは実践家としても気になるところである。

本稿では、マインドフルネス瞑想を含めた、ポジティブ心理学の概念とEQ開発を組み合せた研修プログラム、サーチ・インサイド・ユアセルフ(Search Inside Yourself 以下、SIY)を2007年から行っているグーグルの実践例とその特徴や効果を紹介する。

ポジティブ心理学とマインドフルネス瞑想

ポジティブ心理学の父と呼ばれるセリグマンは、幸福を3つに分類しそれぞれに感じ方の違いがあるとしている。

快楽の人生──ポジティブ感情を持ち、それを強めて人生を過ごす

夢中を追求する人生──物事に没頭し時間が止まる「フロー」の実現

有意義な人生 ──さらに知識や力、善良さを促進する

1の問題点はすぐ慣れが生じること。短期的な喜びの積上げで幸福にはなれないことである。つまり、2および3が、永続的な幸福をもたらすには重要であり、この実現には自身の強みを活かすことが不可欠である。 これまでの調査では、有意義な人生において、相手に感謝の伝える行為や、慈善活動など、他者への思いやり行動が効用を長持ちさせることが分かっているとしている [2]。

これは、心の病を治し、自らの短所や悩みを解消するのではなく、それぞれが生まれながらに備わった「強み」や「美徳」をさらに伸ばすことで、今よりもっと幸せを感じることが可能となるというポジティブ心理学の主張につながっていく。

キャサリン・コーリンの『心理学大図鑑』によれば、ポジティブ心理学の流れとして、1994年にジョン・カバットジンが、ストレスや怒りに対処するための「マインドフルネス瞑想」の観念の導入が記されている