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2025.11.17

イベントレポート「ディープ・タイム・ウォーク in 港北ニュータウン」


📍横浜市港北ニュータウンで実施したDTWのマップはこちらからどうぞ。


2025年の10月下旬に、横浜市都筑区にてディープ・タイム・ウォークを実施しました。

5月に予定していたDTWが延期され、主催者・参加者ともに、念願の開催となりました。

ディープ・タイム・ウォークの開催は、梅雨と真夏日を避けた秋~初夏が良いかもしれません。

この日は、まだ夏の暑さと蚊の攻撃が残る日でしたが、港北ニュータウンの森に包まれて、ディープ・タイム・ウォークに没頭することができました。


6回目のDTWを経て、私が思うこと

参加者は17名、概要は以下の通りで、いつものように40~50代が多めで、今回は男性参加者が多い回となりました。

参加満足度は、92%と、皆さんに満足いただけたようで嬉しいです。

印象に残った内容は、植物に関連した内容が多く、藻やシアノバクテリア、顕花植物の誕生が挙げられました。また、人類の誕生など自分の身の回りのものがいつどのように誕生したのかに多く関心が寄せられました。私自身も、DTWをきっかけに「古代DNA研究」に関心を持ち、この夏、展覧会へ行ったり、縄文の村へ行ったりもしました。住み慣れた地元に、確かに縄文人が住んでいたという痕跡を辿ることで、DTWで得た知識や頭の中で想像した暮らしや風景が目の前に立ち現れます。展覧会や遺跡を訪れると、私たちの「祖先」がどのように環境に適応し、進化してきたのかを、また違った視点で知ることができます。また、DTWの準備をしていると、宇宙・地球・生命の歴史や起源にはまだまだ謎が残ることも多く、様々な説があることを知ります。その謎を解き明かそうと、科学者たちが日々研究を進めていることや、研究の成果を展覧会などで知るための機会が開催されているという情報にも敏感になります。こういった点で、私はDTWの準備から実施、終了後までの全てのプロセスを楽しんで関わっています。

DTWで大変なのは、ルート設定です。全国で出来たらいいなと思っているので、その方法を現在整理しています。こちらで公開予定ですので、少しお待ちいただければと思います。4.6㎞の設定のための計測や場所の選定は大変ですが、色々な場所をグーグルストリートビューで疑似訪問したりするのは個人的には楽しいですので、ぜひお試しください!


DTWをどう演出するか?

今回は、ツアー形式の参加型作品などを発表しているアーティストの方が参加されました。普段から時間軸のあるアートを手掛けていらっしゃり、ディープ・タイム・ウォークをどのように進行するかについて、貴重なご意見を賜りました。彼によるディープ・タイム・ウォークの参加レポートはこちらからどうぞ。

特に、46億年を4.6kmに見立てて歩くということについてー「数字的な対応が明快なので分かった気になりやすいですが、時間経過を空間移動に置き換えるというかなり難易度高くかつ面白いことがおきていると思いました。時間は流れているものという感覚(受動?)から、自分が一歩進むごとに50万年進む(能動?)、という転換をどう参加者が身体に馴染ませていくかの導入が演出の肝かなあと思いました。また、何億年前と言うのか、何億年後と言うのか、など時間・空間に対してどういう位置関係で語るかなど、考えたくなることがたくさんありました。」

彼のコメントを踏まえると、確かに、時間は流れていくものなのに、私たちは過去から現在へ向けて過去を積極的に追体験していますよね。地球の途方の無く深い歴史を、私たちは一歩50万年、一歩50万年、と踏みしめながら、確かに追体験しているのですが、その一歩がどれほどのものであるかは、ディープ・タイム・ウォークの最初は実感しづらいかもしれません。最後の一歩でやっと、参加者は50万年の間に何が起こるのかを知るのです。その1歩の中で、地球は、寒冷期と温暖な気候を繰り返し、人類がネアンデルタール人からホモサピエンスへと置き換えられ、火や言語が利用し始められます。農耕が開始するなど、文明の基礎が築かれます。我々人類は、地球の気候変動に適応しながらも、最終的に地球の環境を変化させるほどの力を持つに至ります。

地球に続いて月が誕生し、水が到来し、1.6kmほど何もない時間の一歩の重みをどれほど想像して歩くことができるのか、確かに山川氏が言うように想像力を要するイベントであることに変わりありません。ですが、時間軸を積極的に追体験することは、ある意味、未来に向けた希望を持ちやすい設計になっているとも思えるのです。ディープ・タイム・ウォークは、その発展の中で、ジョアンナ・メイシ―による「つながりを取り戻すワーク」における「アクティブ・ホープ」の思想も受け継いでいると筆者は理解しています。「アクティブ・ホープ」とは、「有望性が無く、絶望的に思える状況においても、自らが願い、望む世界を実現するために積極的な行動を『選択』すること」と定義されます(ジョンストン・メイシ―, 2015)。指の間をスルッとすり抜けるようにつかみどころのない時間を、4.6kmアクティブに追い、参加者は現在へと辿り着きます。ですが、ここがゴールなのではなく、過去の途方の無い時間を歩んできたように、これからも地球の歴史は続いていくことを参加者へ問いかけます。現在へとたどり着いた参加者が、これからも続いていく地球の歴史を前にしたときに、どのような行動をしていきたいか、地球の歴史を共に刻んでいく一員としての自覚を獲得する可能性を、ディープ・タイム・ウォークは持っているのでしょう。

私は、ディープタイムウォークを何度も経験するたびに、ストロマトライトや三葉虫、目に留まる石や苔、木々などの地球を生きた先輩たちに、問いかけられているような気持ちになります。

 「あなたは、あおい海のあおい星に生まれた自分の『いのち』をどう使っていきますか。」と…

海から陸上進出を果たした生命が、海を守る行動をしたり、空が青いままでいられるように気候変動に関心を持ち続けたり、ディープ・タイム・ウォークは、環境教育手法として非常に有効だと思うのですが、

同時に、やはり、環境変化に適応し、祖先から繋がれてきた「いのち」への感謝を高める教育手法でもあると思うのです。DTWは、過剰な自己責任論が蔓延る社会や日々の生活で忘れかけてしまいそうな「つながり」を取り戻し、自身と地球のウェルビーイングを考えるきっかけになると信じています。


アンケート結果から見る参加者の変容とDTWの特徴

今回の ディープ・タイム・ウォーク参加者に、「イベント前後でどのような変化があったか?」を尋ねたところ、次のような結果になりました。

  • 気候変動や自然環境に対する印象が変化した人:92%
  • 自然とのつながりを強く感じるようになった人:83%
  • 自然への畏怖(神聖さ・圧倒感など)を感じた人:83%
  • 幸福度が高まった人:75%

中でも最も大きな変化が見られたのは、「自然環境に対する印象」の変化(92%)でした。参加者の声としては、「自然への尊敬や、大切にしたいと思う気持ちが高まった。人やものへの感謝の念が高まった。人類の責任と希望。いつも見ている青い空は青くなかったことへの驚きと気づき。何とかする手段を知るだけだけど始めた。環境汚染が長い歴史の中の非常に短い期間に起こったことに気づいた。」が挙げられました。

DTWでは、地球46億年の時間を歩きながら「いのちのつながり」を体感します。そのため、参加者の多くが「自然を見る視点」そのものが変わったと答えています。

また、「自然とのつながり」や「畏敬の感覚(awe)」を感じた人が83%にのぼりました。これらの感情は、私たちの幸福感を高める重要な要素で、過去のDTWの調査でも繰り返し現れてきたポイントです。参加者の声としては、「地球が生まれたことが奇跡。人間のちっぽけさを感じた。」などが挙げられています。

幸福度の変化は75%でしたが、「自然観の変化 → つながりや畏怖 → 幸福感」という流れを考えると、今回も DTW の特徴がそのまま現れた結果と言えます。幸福感の変化の理由としては、「自然に囲まれていること。参加者がフレンドリーで安心感を感じた。悩んでいることは些細なことなんだ。歩く中で高まっていく感じ。今を感じる、考える、人と接すること。」など、他者とのつながりを感じられるのもDTWの特徴の一つです。


おわりに

いかがでしたでしょうか?これからもDTWでの新たな気づきなどありましたらシェアさせていただきますので、ぜひご注目ください!

 

一般社団法人ウェルビーイングデザイン

宮地 眞子

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