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2019.07.03

人生の目的(パーパス)を明確に!(ユニリーバの島田由香さんの事例)

『幸せな職場の経営学』(小学館、2019年)に掲載したユニリーバ・ジャパン・ホールディングスの事例の一部に加筆して掲載します。

今やHR(Human Relation=人事)業界では誰もが知る、島田由香さんにお話を伺いました。
ユニリーバ・ジャパン・ホールディングスで取締役人事総務本部長を務めながら、ポジティブ心理学や神経言語プログラミングなどにも造詣が深く、旧態依然となりがちな人事分野において次々と革新的な取り組みを進める、人事界のジャンヌ・ダルクのようなアクティブな方です。

島田さんの功績は多々ありますが、なかでも最近、力を入れているのが2016年7月から始まった「WAA(Work from Anywhere and Anytime)」という取り組みです。

WAA(Work from Anywhere and Anytime)

「WAA」とは、誰もが自分らしく働き、それぞれのライフスタイルを楽しむことで産性や創造性を高められるよう、「働く時間・場所を社員一人ひとりが自由に選べる」という人事制度です。主な取り組みは以下の通りです。

  • 上司に申請すれば、理由を問わず、会社以外の場所(自宅、カフェ、図書館など)でも勤務できる
  • 平日6〜21時の間で自由に勤務時間や休憩時間が決められる(1日の標準労働時間は7時間35分、1ヶ月の標準勤務時間=標準労働時間×所定労働日数とする)
  • 全社員対象で期間や日数に制限はない(工場やお客様相談室など一部部署を除く)

島田さんが仕掛け人となり、ユニリーバからスタートしたこの新たな人事制度は発表と同時に多くの反響を呼び、他社や異業種からの問い合せが殺到したそうです。
そして、こうした取り組みを採用する他社も出てきました。今では会社という枠組みを超え、異業種、地域など多様な人たちが関わり、その規模はどんどん広がっています。
そして、ユニリーバでは、このWAAの実施によって社員の幸福度が上がっただけでなく、会社全体の生産性が30%もアップするなど、大きな効果が数字として現れています。

[WAAの裏の課題]

  1. 通勤時間の割愛
  2. 通勤ラッシュの撲滅

[効果]

  • 会社の生産性 → 30%アップ
  • ポジティブ度 → 68%アップ
  • 社員の幸福度 → 33%アップ
  • 残業時間   → 月に80時間を超えた人が導入前には多いときは15人前後、少ないときは2~3人いたが、導入後は0~1人に減少
  • 「生産性が上がった」と答えた人 71.6%
  • 「生産性が下がった」と答えた人 3.3%
  • 導入から6カ月後のアンケート結果
    「毎日にポジティブな変化がある」67.8%
    「労働時間が短くなった」24.6%
    「労働時間が長くなった」4.9%
  • 導入から10か月後のアンケート結果
    「新しい働き方により、毎日がよくなったと感じる」66.8%

社員の幸福度やポジティブ度だけでなく、残業時間が大幅に減り、生産性も上がったことは注目に値するでしょう。

WAAを始めた動機について、島田さんはこう語っています。
「いまだに仕事は辛いもので、修羅場体験の場だとか、楽しんではいけないといった感覚を持っておられる方がいますが、私はそれが本当にもったいないと思うのです。なぜなら、それでは一人ひとりが持っている力を十分に使い切れていないと思うからです。幸せに働くことを躊躇しているのではないでしょうか。
『WAA』の取り組みもそんな思いから始まりました。この制度が日本の大企業に定着したら素晴らしいじゃないですか。社員にとっては楽で、楽しくて、その上、生産性も向上するのですから。
ちなみに補足すると、私は、本当は生産性という言葉が好きではないんです。幸性(しあわせい)に置き換えた方がいい。生産性が大事という人に理解してもらうために、あえて生産性という言葉を使っています」

島田さんの言葉や取り組んでいること、これから実現したいと思うことを改めて見返すと、そのすべてに幸せの4因子(「やってみよう」「ありがとう」「なんとかなる」「あなたらしく」)が含まれていることがわかります。

  • 自分の成長する姿を思い描き、やりたいことにトライする=「やってみよう因子」
  • 一人ではできないことでも周りと協力すれば成し遂げられる=「ありがとう因子」
  • 変化は恐いけれど、きっとできるはず=「なんとかなる因子」
  • 自分らしい人生をデザインしよう=「あなたらしく因子」

人生の「目的(Purpose)」

さらに、島田さんの考えるリーダー像は、働く人々が成長できる幸福な職場を作る上での大きなヒントになりそうです。たとえば島田さんは、人を育てる上で大切なことは、その人自身の人生の「目的(Purpose)」を知ることだと言います。どんな人生をデザインしたいのか、何をしているときにもっともワクワクするのか。つまり、その人自身の「あり方(Being)」です。

さらに、自分自身も若いうちから自分が理想とする「あり方」について、常に自分と対話し続けることが大切です。
そして、リーダーにとっては、チームメンバーの話によく耳を傾け、相手のためにサポートすることも大切な役割となります。メンバーが何を大切にしているのか、何のために働くのか、何がモチベーションとなるのか、何が強みかといったことを、深く内省させながらも相手から引き出していくのです。それを続けると、自然と自分や相手の思考や生き方そのものが変化していくはずです。

「私にとって『目的』はとても大切な言葉です。それは北極星のようなもので、どんな状況においても、自分を導いてくれるガイドのような存在です。
社内でも初めての上司や部下に必ず聞くことは、『あなたの人生の目的は何ですか?』ということ。なぜなら自分の人生の目的と会社のそれが合致していれば、仕事が円滑に進み、パフォーマンスが向上するだけでなく、何より楽しいですから。

自分の目的(パーパス)の見つけ方

では、どうしたら自分の目的を見つけるのかというと、シンプルなことを2つだけすればいいのです。
一つは『ワクワクすることをやる』、もう一つは『自分の強みを使う』。
自分の人生を振り返ってみて、どんなことに熱中したのか、何をしているときが一番楽しかったのかを思い出すと、自分が本当にやりたいこと、自分の強みが徐々に見えてきます。なぜなら、自分の強みを使っているときは、そのエネルギーを身体感覚で感じやすいから。自分の人生の目的に気付いている人は、すごく生きやすくなりますし、さらに自分の強みを社会のために使えば、すべてがうまくいくようにできていると確信しています」

みなさんも、自分の人生の目的を見つけて、幸せになってください!

※参考
幸せな職場の経営学
前野隆司著

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