2026.04.29
イベントレポート「THE WELLBEING WEEK 2026」

皆さん、お久しぶりです!
3月13日~22日にかけてTHE WELLBEING WEEK が開催されました。ウェルビーイング学会主催のTHE WELLBEING WEEKは、国連が定めた世界幸福デーの3月20日の前後1週間で「ウェルビーイング」について学び、体験し、分かち合うことができるイベントです。今年で10年目になりました。
期間中、武蔵野大学ウェルビーイング学部生によるワークショップなど多種多様なイベントが行われてきましたが、この記事では、特に最終日のシカゴ大学の大石先生とウェルビーイングを冠する7大学が参加したシンポジウムの様子についてご報告いたします。
1.シカゴ大学大石先生による基調講演
最終日はまず、幸福学の権威であられるエド・ディーナー博士のもとで学ばれたシカゴ大学の大石繁宏先生にご登壇いただきました。『ウェルビーイング研究の過去と未来:グローバルな観点から』についてお話しいただきました。
大石先生は最初に、ウェルビーイングを単に「幸せ」と訳すだけでなく、もともとの意味である “being well”=「よい状態であること」 から考える重要性をお話されました。よい状態とは、満たされていること、自分で困難に対処できること、よく生きること。そしてよい人生とは何かを問い続けることでもあります。
そして、ウェルビーイング研究が1930年代から始まっていたこと、しかし行動主義心理学の影響により一時停滞し、1980年代以降に主観的ウェルビーイング研究として再び発展してきた歴史が紹介されました。
また、幸福研究は、アメリカ中心に発展しており、それをそのまま日本やアジアに当てはめることの限界についても指摘されました。例えば、欧米では、自尊心やポジティブ感情が幸福感と強く結びつきやすい一方、日本では「周囲との調和」「小さな幸せ」「生きがい」「まあまあ幸せ」といった感覚が、より自然なウェルビーイングのあり方として挙げられました。
ご講演で特に印象的だったのは、「幸せでなければならない」というプレッシャーが日本では比較的低く、極端な幸福を目指すよりも、日々の生活の中にある小さな喜びやバランスを大切にする傾向があるという点です。なぜなのだろうか?と疑問が浮かんだのと同時に、日本におけるウェルビーイングを考えるうえで重要な視点と感じました。
ご講演全体を通して、ウェルビーイングとは一つの尺度で測れるものではなく、文化、人生観、人間関係、社会環境によって多様に形づくられるものであることが分かりました。私自身も、ウェルビーイング研究の歴史を学びながら、これからの日本発のウェルビーイング研究に想いを巡らせる時間となりました。

武蔵野大学ホームページより
2.ウェルビーイングを冠する大学とのシンポジウム
続く午後のシンポジウムでは、「ウェルビーイング」と名の付く大学組織が集まり、それぞれの教育・研究・地域連携の取り組みを紹介しました。
冒頭、精神科医でもあられる武蔵野大学の小西学長より、ウェルビーイングは単に「幸せ」や「前向きな状態」だけを指すものではなく、心身の健康、他者との関係、社会とのつながり、そして苦しみからの回復とも深く関わるものであることについてお話がありました。特に、日本においては、自己実現だけでなく、利他性や他者との関係性も大切な視点になる可能性について言及されました。
その後の各大学の発表では、ウェルビーイングを個人の内面だけでなく、地域社会や環境との関係の中で捉える実践について、数多く紹介されました。例えば、神戸大学からは、個人の健康や生きがいに加え、地域コミュニティや自然環境のウェルビーイングを考える研究が報告されました。高齢者の孤立を防ぐための「ワイがやプロジェクト」では、地域イベントや学びの場を通じて、人と人とのつながりを育む取り組みが進められています。
佐賀大学からは、学生支援・キャリア教育の観点から、学習者自身が自分の将来を主体的にデザインするための取り組みが紹介されました。大学で何を学び、どのように生きていくのかを学生自身が考えられるよう、キャリア支援、学習支援、リカレント教育などを横断的につなぐ体制づくりが進められているとのことです。
帝塚山学院大学からは、地域と大学がともにウェルビーイングをつくる「共創」の取り組みが紹介されました。健康は個人の努力だけでなく、住んでいる地域や人とのつながりにも影響されます。そこで、学生が地域の人々と関わりながら学ぶ「サービスラーニング」を通して、地域全体のつながりを育むことが目指されています。
発表を通じて印象的だったのは、どの大学もウェルビーイングを「個人が幸せになること」だけでなく、「人と人、人と地域、人と社会がよりよくつながること」として捉えていた点です。
研究、教育、学生支援、地域連携など、アプローチは異なるものの、ウェルビーイングを社会の中で実現していこうとする組織が集まり、熱気あふれる時間となりました。
会場では、専門的な議論だけでなく、登壇者の率直な悩みや笑いも交じり合い、あたたかく、そして対話的な雰囲気に満ちていました。ウェルビーイングという言葉の広がりとともに、大学が果たす役割も多様で大きく変わりつつあるのだと感じました。

各大学の取り組み紹介の後の共有タイム(筆者撮影)
3.まとめ
今回のシンポジウムは、ウェルビーイング研究が、個人の幸福を超えて、地域、社会、未来をともに考える実践へと広がっていることを実感する時間となりました。ご協力いただいたみなさま、誠にありがとうございました!
■神戸大学(ウェルビーイング先端研究センター)
https://www.research.kobe-u.ac.jp/arwb-center/
■佐賀大学(ウェルビーイング創造センター)
■帝塚山学院大学(ウェルビーイング共創ハブ)
https://www.tezuka-gu.ac.jp/news/20996/
■東京大学(東京大学公共政策大学院ウェルビーイング研究ユニット)
https://well-being.pp.u-tokyo.ac.jp/
■弘前大学(教育学部附属次世代ウェルビーイング研究センター)
https://hirodai-wellbeing.com/
■山形大学(Well-Being研究所)
■北陸大学(高等教育推進センター・ウェルビーイングリサーチチーム)
https://www.hokuriku-u.ac.jp/sptopics/202604061100.html(イベント報告ページあり)
■武蔵野大学(ウェルビーイング学部・研究科・)
https://wb.musashino-u.ac.jp/archives/3230(イベント報告ページあり)
参考
THE WELLBEING WEEK 2026 公式ホームページ https://well-being-week.com/2026/ (2026年4月29日閲覧)
一般社団法人ウェルビーイングデザイン
宮地 眞子