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2022.04.10

【イベントレポート】前野隆司・前野マドカ共著「ウェルビーイング」出版記念トークセッション

2022年3月23日に「ウェルビーイング(日経文庫)」の出版記念トークセッションが開催されました。

 
「ウェルビーイングとは何か?」という基本から、企業での取り組み、毎日をウェルビーイングに過ごすコツなど、著者のお二人にいろいろな角度からウェルビーイングを語ってもらいました。
動画はYoutubeにて公開しているのでこちらもぜひご覧ください!
 

ウェルビーイングとは?

隆司:「ウェルビーイング」とは、WHO(世界保健機関)の健康の定義で「身体的・精神的・社会的に良好な状態である」とされていますが、直訳するとWellは「良い」でbeingは「あり方」なんです。ですから、心と身体と社会のよいあり方のことをWell-beingと言います。
最近日本では、ウェルビーイングが「幸せ」という意味で流行っているじゃないですか。元々は健康の定義で使われていたので、SDGsの3番目の「Good health & Well-being」では健康と福祉と訳されています。医療業界の方は健康と訳すし、福祉業界の方は福祉と訳すし、心理学者は幸せと訳すので健康という意味で使われていたのですが、基本的には「幸せ」を中心にこの本を書いています。
ウェルビーイングについて日本や世界の政治で行われていることや、企業での社員を幸せにする経営についてもいろいろ書いていますし、家庭の方はマドカがメインで、夫婦の幸せ、家族の幸せ、それから地域の幸せのことを書いています。
 

自分の幸福度を測ってみる

隆司:僕は、はぴテックという会社と一緒に幸せを測る「幸福度診断Well-Being Circle」というものを作りました。今やりがいを感じているとか、ストレスがたまっているということがレーダーチャートで分かるようになっています。個人は無料でできて企業の場合は課金しているのですが、今ではもう13万人の方が受けてくださっています。
マドカ:このうちの2万7000人が積水ハウスさんの社員で、全社員が受けてくださったんですよね。
 
隆司:社長の仲井さんが就任された時に「家を世界一幸せの場所にする」、つまり自分の製品でお客さんを幸せにするんだ、というコンセプトを出されていたんです。その後に僕と社内報で対談して、僕が幸せについて話したら「わが社も世界一幸せな場所にしよう!」と言って、社員も幸せにしようということにしたんですね。もうその場で即決して、個人の幸せに特化した「幸福度診断Well-Being Circle」と、パーソル総研さんと一緒に作った「はたらく人の幸せ/不幸せ診断」を全社員を対象にやられたんです。
 
マドカ:幸福学も健康も、調査したら「じゃあどうするか」という行動まですることがすごく大事ですよね。
健康と同じように、心も何に気を付けていたら幸せか、というのはもうわかっているので幸福度診断で調査して、何が大事なのかを知識として知って、じゃあどうすればいいかを認識して行動していけばいいと思うんですよね。そのエッセンスをこの本の中にいっぱい書いています。
私は研究員として9年目で、子供やママや女性社員にウェルビーイングを伝えていますがすごく成果が出ています。子供ってすごく早くてあっという間に変わっていくんですが、基本は大人も一緒なんです。大事なことは同じなので、大人も意識して行動したらすぐ変われると思います。

どんな人が幸せな傾向にある?

隆司:自分の居場所があると幸せなんですよ。会社と家の往復だけですか?趣味のサークルやボランティア活動をするとか、古い友達と会うのもいいです。やっぱり「場」がいくつかあるということは、幸福度が上がるんですよね。たくさんのコミュニティに属している人の方が、健康長寿なんです。
 
感謝する人は幸せですって僕はよく言うけれど、正確に言うと感謝する方が幸せな傾向が高い、とうことです。哲学じゃなくて心理学ですからね。哲学と心理学の違いは、哲学は考えて考えて考えぬいて「感謝する人は幸せなはずだ」というのが哲学。心理学は調査して調査して、調査した結果「感謝する人は幸せな傾向がある」と明らかにするという研究方法ですよね。こういう研究結果も書いてるし、日本を中心にしながらも世界も含めてウェルビーイングについての最先端を書いた、というのがこの本ですね。
僕たちは幸せについていっぱい知ってるんですよ(笑)。もっとみんなに知ってほしくて本当にいろいろな側面から幸せについて書いています。
 
本にはいろいろ書きましたが、とにかく「やりがい」と「つながり」なんです。もっと細かく言うと「幸せの4因子」がありますが、「やりがい」と「つながり」なんです。ということは、何かつながる場、そこが趣味のサークルだったり好きなことだったらみんな盛り上がるじゃないですか。好きなことでつながるというのが、世の中にたくさんあるとみんなが幸せになります。みなさんだったらどうですか?ぜひ何か思いのこもった場を持つことですよね。
 
マドカ:やっぱり話し合う場、対話ですよね。それが大事なんだなといつも思います。最初はたわいのないことから始まったとしても、その中にたくさん自分や相手の興味のあること、共感することが見つかりますよね。
 
隆司:テレビで観たことを話してもいいんですが、できれば自分のストーリーがいいですよね。僕は「感動」の研究もしていますが、「みなさん何に感動しますか?」と聞くと、映画やミュージカルなど、外の何かには感動するけれど私生活には何もありませんっていう方いらっしゃるかもしれません。でも本当は私生活にあるんですよね、「感動」って。それを味わうようにすると幸せですね。
最近は母と家の家庭菜園でブルーベリーを植えたりしているんですが、自然との対話もいいですよね。それを通して母と会話するというのも幸せですね。
 
今回のこの『ウェルビーイング』には書かなかったけれど、本当は村社会って幸せなんですよ。ブータンという国が幸せなんです。幸福度調査をすると日本より下になりますけど、でも僕が実際ブータンに行って人々を見ていると、つながりのある安心感があるんです。
当時JICAからブータンに行った、現在は福井県立大学の高野先生が、「みなさんが本当に困った時、助けてくれる人は何人ぐらい思い浮かびますか?」とブータンの人に聞いたら、平均して「50人」と答えたそうです。
都会人がいきなり村に戻るわけにはいかないけれど、でもサードプレイスとかインターネットコミュニティが村になれば、日本人もそんなに不安にならないわけですよ。
 
マドカ:「無関心」って愛の反対ですよね。長い人生でみたら無関心で生きていけないんです。人に関わって、人のことを心配してたりしてもらったりしながら生きるのが人生の醍醐味じゃないかなと思いますね。

幸せでいる秘訣

隆司:それと成長の幸せって、新しい自分になってより強みを持つし達成感もある。会社だとみんなで成し遂げているからお互い「がんばったなあ!」という感じになりますしね。
 
マドカ:会社だったり、家族だったり人が集っているところには絶対にそれが起こるので、そこを見つけて味わえると幸せですよね。今日の私は昨日の私よりも、絶対にどんな人でも必ず少しでも成長しているんです。それを見つけて味わえると幸せですね。
 
隆司:それを感性を豊かにして、「ここが伸びたね」って言い合えると幸せですね。
江戸時代から一緒で、微妙な違いを見抜くというのは茶道などと同じです。シンプルな部屋の中で茶碗や掛け軸やお花の美しさを喜び、お茶を味わい会話を楽しむ。日本の古いものに、実は幸せの条件って入っているんですよ。だから私は、日本の文化を世界に発信する学校をやりたいと思っています。
いろいろな教育の場を作りたいと言い続けていると、いろんな人が誰かを紹介してくれたり一緒にやろうと言ってくれます。
幸せのコツは有言実行。みなさんも何か行動するといいですね。小さくていいです。僕も15年ぐらい前に幸せの研究始めた頃は「なんだか怪しい研究を始めたね」と言われてました。今思い出しても、よく信じてやれたなと思いますね(笑)。
 
マドカ:それから「こんな自分でありたい」と思っているのはすごく大事ですね。
愛にあふれた人でいたいって思っていると、今できていなくても何かを選択する時に「愛にあふれた人でいるためにはこっちを選んでおこう」となって、結果としてそちらにいけるようになると思います。
だからみなさんも「どんな自分でいたいか」「どうありたいか」というのを常に意識しておいておいてもらえるといいと思います。

最後に

マドカ:いろいろなことを本に書きましたけれど、でも私はどんなやり方でもなんでもまずは「自分にとっての幸せやいい状態って何だろう」と考えてみて、次に家族や会社の仲間や地域にとってのウェルビーイングを考えながら日々を過ごしてほしいなと思います。願いは一つです。みんなすべての方が自分らしく幸せに生きて欲しいなと思っています。
 
隆司:地球の裏側では戦争が行われている時代になってしまったじゃないですか。苦しくて良くないものも出てるけれど、すごく希望を感じるものも出てきています。ウェルビーイングの研究が進んで、みんながウェルビーイングを目指せるようになったのも良いと思うんですね。
幸せな人って利他的なんです。人のためを思う人が幸せなんですよ。こういう時だからこそみんなのために利他的になって幸せになっていったら、争いは起きないじゃないですか。そうすると世界平和になるはずだって僕は信じてます。

そして後半のQ&Aコーナーでは、たくさんの質問をいただきました。
「社会に出たばかりの新人の心身ケアを会社としてどうしていけばいい?」
「障害を持って働いている社会的に弱い立場の方々のウェルビーイングな生の声や事例が知りたい」
「もし世界中の人がウェルビーイングな状態になったら、物欲がなくなりラグジュアリーブランドのような文化が衰退してしまうのでは?」などなど・・・
質問の回答はぜひ動画でチェックしてください!
次の記事では、Q&Aコーナーでいただいた質問から生まれたウェルビーイングな繋がりについてご紹介します。
レポート/小宮沢奈代

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